温泉療養のススメ1 統合医療,補完代替医療とは?
今回から数回に分けて温泉医学・温泉療養についてご紹介したいと思います.
まずは温泉医学のお話の前に,補完代替医療の説明をしましょう.
我が国では古くより病気の療養目的で温泉が利用されてきました.
当時はリウマチや肺結核などの良い治療法もなく,温泉地に長期間滞在し,温泉に浸かって病気を療養していました.
このような療養目的で温泉地に長期滞在することを「湯治(TOUJI)」といいます.
私はこのトウジという響きが結構好きです.
なんだが癒しているような雰囲気で良いですよね.
近年になり医学は急激に進歩し,今まで難病とされてきた病気もだんだんと原因が解明され,それに伴い治療法も劇的に進化しました.
医療の分野では,治療のエビデンスが求められるようになり,EBM(Evidence Based Medicine;科学的根拠に基づいた医療行為)が重要視されています.
温泉療法などの伝統的に行われてきた民間療法は,最新医学のようなエビデンスは乏しいかもしれませんが,代替療法や補完医療として近年注目されています.
また,最新医療と補完代替医療を両方とも組み合わせて全人的に治療を行うことを統合医療とよんだりします.
「医学」という言葉と,「医療」という言葉は同じようで,全く違う意味合いの言葉ではないかと勝手に解釈しています.
私のイメージする「医学」とは,自然科学のことであり学問・サイエンスなのであります.
学問学術的な世界で重要視されることは科学的真理性です.
エビデンスがやっぱり大事なのであります.
「医学」の急激な進歩により私たちは多大な恩恵を受けています.
たった100年前までは主な死因は結核や肺炎などの急性感染症でしたが,治療薬の開発などにより疾病構造は激変し,現代の主な死因は悪性腫瘍(癌),心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病です.平均寿命はどんどん更新され,長寿社会を実現しました.
しかしこの「先端医学」をもってしても現代社会では万能ではないのです.
生命現象は分からないことだらけであり,最新の医学知識を駆使しても分からないことが多くあります.
大きな病院で全身精密検査を行っても,病気の原因が解明出来ないことがあります.
原因が分からないのであれば,科学的根拠に基づいた適切な対応は難しいかもしれません.
また,病気の原因が分かったとしても,すべての人が同じ治療により同じ効果が得られるとは限りません.
人間には多様性があり,また医学には限界があるからです.
それでも私たち医療者は,患者さんの病気をなんとか治療しなくてはなりません.
私のイメージする「医療」とは,学問ではなくて,患者さんを中心とした患者さんのための医療行為全般を指しています.
最新の医学的知識(サイエンス)を基礎にして,エビデンスのある治療を行うことが最も合理的であり,第1選択です.
しかし,それだけでは良い結果が得られない場合も多々あります.このような場合に,患者さんの生活の質を高めるためには補完代替医療が有益であることが少なくありません.
補完療法には温泉療法のほかにも,漢方治療,鍼灸などが代表的で伝統的に昔から親しまれています.近年では芳香療法(アロマセラピー),アーユルヴェーダ,ホメオパシー,音楽療法,アニマルセラピーなど多様な補完治療が行われています.
これらのなかにはエビデンスのあるものもあり,近代医療を補完する存在として期待されています.
患者さんによっては補完医療が非常に有効なケースもあります.
でもそれで満足してしまって,一般の診療を中断してはいけません.
補完的治療は継続しながらも,バックグランドに大きな疾病が隠れていないのかを,常に科学的な眼で観察してゆく必要があります.
補完医療は,近代医療の補助的な存在であることを忘れてはなりません.
今回は,補完医療としての温泉医療の位置づけについてお話させていただきました.
次回は温泉療法のもう少し具体的な内容について説明します.
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